【LD】書字障害の対応と対処法は?書くことが苦手な学習障害

【LD】書字障害の対応と対処法は?書くことが苦手な学習障害

文字をうまく書けない、左右反対の鏡文字を書いてしまう、漢字が覚えられないなどの症状が特徴的な学習障害LDに「書字障害」があります。

そこで今回は、LD学習障害のうち読み書き障害の「書字障害」の対応と対処法についてポイントをまとめてみたいと思います。

書字障害の特徴について

LD学習障害のタイプのひとつに、書くことが苦手な「書字障害」があります。

書字障害では次のような特徴がみられます。

・左右逆の鏡文字を書く
・字が汚い
・マスや行から字をはみ出してしまう
・黒板の字を書き写せない
・漢字が覚えられない
・作文が書けない

書字障害の原因は、脳機能の視覚認知のゆがみの影響と考えられています。

では、書字障害にはどのような対応や対処法が有効なのでしょうか。

書字障害の対応と対処法について

字が汚い、鏡文字を書く、漢字が書けないといった特徴をもつ書字障害の場合、まず最初のうちは、なぞり書きや模写から始めましょう。

はじめのうちからキレイに字を書こうとするよりも、線・円・点などから書くことの練習をはじめるとよいでしょう。

なぞり書きや模写のトレーニングによって、指先のコントロールができるようになり、バランスのよい文字を書く能力が身についていきます。

リズムや歌をつけて文字を書く

直線や波線、円などのなぞり書き模写ができるようになれば、ひらがなや漢字を見て書く練習にうつります。

書字障害の子どもの中には、字を書くときに「たてたて、よこよこ」とリズムや歌をつけると文字が書きやすくなる子もいます。

また「空は、うかんむりにハエ」「杉は、木だからきへん」といったように、ただ漢字を覚えようとするのではなく、イメージやヒントを使うと覚えやすくなる子もいます。

黒板の板書をノートに書き写すのは難しい

LD学習障害の子どもは短期記憶が弱いことが多く、黒板に描かれている板書の文字をノートに書き写す作業が苦手な傾向があります。

黒板の文字を見る、ノートに目をうつす、手に鉛筆を持って字を書く、という一連の動作は、普通の人であれば簡単なことかもしれませんが、LD学習障害の人は、ノートに目をうつしたときに、さっき見た黒板の文字を忘れてしまうのです。

LD学習障害(書字障害)の場合、無理に黒板の内容をノートに書き写そうとするよりも、授業での教師の話を聞くことに意識を集中したほうがよいでしょう。

板書の内容は事前にプリントにしておき、それを見ながらノートに書く、という方法も有効です。

書きやすいノートを使うこと

書字障害の場合、漢字の左右上下のバランスが崩れたり、小さい「っ」「ゃ」句読点を書く位置がよくわからない、というケースもみられます。

普通の横線だけのノートに書くよりも、マス目の中に十字の点線が入っているようなノートを使う方が、書字障害の人には書きやすくなります。

文字をバランス良く書けるようになってきたら、徐々に普通のノートにしていくとよいでしょう。

漢字を書くときの注意点

文字を書くことが苦手な書字障害の子どもに、漢字の練習をするときには次のようなことに気をつけましょう。

・意味がわからないと漢字を覚えにくいので、同じ漢字を10回繰り返して書く等の練習はさせない方がいい

・止める、はねる、書き順など、細かいことにはこだわらず、頑張って書いたこと自体をほめること

・漢字の書き順や、とめる、はねる部分をうまく書けたときは、その都度ちゃんとほめること

・書く文字数を減らして、書く行為に抵抗感をなくす工夫を

作文の書き方のポイントは5W1H

作文が書けない子どもも多くみられます。

どう書けばいいのか分からない、どんな順番で書くのか難しい、という子どもには、「いつ・どこで・だれが・何を・どうした」という5W1Hの流れで書くと書きやすくなります。

また作文の書き方の手順として、
①印象に残っている出来事を書き出す
②そのときの気持ちを書き出す
③書いたものを順番に並べる
④順番をつなげてひとつの作文にする
という流れを決めた方が取り組みやすく感じる子どももいます。

◆この記事は、教育心理学者、東京学芸大学名誉教授の上野一彦先生執筆・監修「図解よくわかるLD(学習障害)(ナツメ社)」の内容に基づいて、当サイト運営事務局の心理カウンセラーが記事編集をしています。